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■品番
RSU317BK03XXL

■JAN
4997035007608

■商品詳細
接触冷感機能に加え、優れた通気性と速乾性、さらりとした肌触りを実現したインナー。
すばやく汗を拡散させ、さらに走行風を受けることにより気化熱冷却を促し、真夏のツーリングでも快適にご着用いただけます。

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・通気性・速乾性に優れたメッシュ生地(脇)
・着脱のしやすいフロントハーフジップ仕様

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2021年10月17日日曜日

サム・シチリアーノ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 白蛇伝説」(The further adventures of Sherlock Holmes / The White Worm by Sam Siciliano) - その1

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英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2016年に出版された
サム・シチリアーノ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 白蛇伝説」の表紙

本作品「白蛇伝説(The White Worm)」は、米国ユタ州ソルトレークシティー出身の作家であるサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)によって、2016年に発表された。

本作品は、(1)1994年に発表された「オペラ座の天使(The Angel of the Opera → 2015年1月24日付ブログで紹介済)」、(2)2012年に発表された「陰謀の糸を紡ぐ者(The Web Weaver → 2016年11月13日付ブログで紹介済)」および(3)2013年に発表された「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日、9月19日および9月26日付ブログで紹介済))」の続編に該り、シャーロック・ホームズの相棒を務めるのは、彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)で、本来の事件記録者であるジョン・H・ワトスンは、前3作と同様に、本作品には登場しない。


暦の上では、既に4月に入っていたが、時候的には、まだ春とは言えない状況だった。そんな4月のある月曜日の晩(午後6時過ぎ)、ヘンリー・ヴェルニール医師は、ベーカーストリート221Bに、従兄弟のシャーロック・ホームズを訪ねた。二人が話をしていると、ハドスン夫人(Mrs. Hudson)が、若い男性を案内してくる。


彼は、アダム・セルトン(Adam Selton)という先月21歳になったばかりの青年で、英国北部ヨークシャー州(Yorkshire)の港町ウィットビー(Whitby)から、彼の恋人のことで、わざわざ相談にやって来たのだった。

彼の恋人の名前は、ダイアナ・マーシュ(Diana Marsh)で、ウィットビー近くのダイアナズグローヴ(Diana’s Grove)と呼ばれている土地に住んでいると言う。彼女は一人娘で、彼女の両親は共に3年前にインフルエンザが原因で死去し、また、彼女の祖父は昨年死去したため、現在、彼女は、最近夫と死別した叔母に該るレディーヴェール(Lady Verr)と一緒に住んでいる、とのことだった。

一方で、アダム・セルトンの父親は、彼がダイアナ・マーシュを妻として迎えることを良しとしていなかった。


アダム・セルトンは、上着のポケットから、差出人不明の人物から受け取った手紙を取り出して、ホームズに渡した。その手紙は、アダム・セルトンに対して、ダイアナ・マーシュと距離を置くよう、警告していた。

マーシュ家が長年住んでいる土地ダイアナズグローヴには、白い大蛇の呪いがかかっていると言う。200~300年前、マーシュ家の先祖が、人間に害を為していた大蛇達を退治して、当地に住むようになった。そのため、それ以降、マーシュ家は、大蛇に呪われているのだと、その手紙は警告する。

ホームズは、従兄弟のヘンリーと依頼人のアダム・セルトンの二人に対して、古語の「Worm(虫)」は、「Serpent(蛇)」や「Dragon(龍)」を意味するのだと補足する。

その手紙は、更に、マーシュ家を呪う大蛇は、女性の姿をしている場合もあると付け加えていた。

この匿名の手紙は、アダム・セルトンの恋人であるダイアナ・マーシュのことを、マーシュ家を呪う大蛇だとあてこすっているのだろうか?


地元民の間では、夜間、ダイアナズグローヴの森の中に、緑色に光るものや白い幽霊のようなものを見かける者が出ていた。

緑色に光るものとは、マーシュ家に呪いをかけている白い大蛇の目なのか?また、森の中に現れる白い幽霊のようなものとは、一体、何なのか?

アダム・セルトンの依頼を受けて、ホームズとヘンリー医師の二人は、彼と一緒に、ヨークシャー州へと向かい、現地で調査を始めるのであった。


2021年10月16日土曜日

ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」(Sherlock Holmes / Gods of War by James Lovegrove) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2014年に出版された
ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」の表紙
(Images : Dreamstime / Getty / funnylittlefish)

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆(3.0)


シャーロック・ホームズが諮問探偵業から引退した後の事件で、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)による正典では、「ライオンのたてがみ(Lion’s Mane)」(1907年に発生)「最後の挨拶(His Last Bow)」(1914年に発生)の間に該る。事件が発生した時期として、戦争の影が欧州全体を覆いつつあった1913年9月が設定され、事件の根底は、「最後の挨拶」にも通じるが、犯行の動機としては、本作品の方が恐ろしいかもしれない。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)


約290ページある物語の内、宝飾品盗難事件に冒頭の50ページ近くが費やされている。本作品のメインとなる事件に、イーストボーン(Eastbourne)に巡業で来ていたサーカス団に属する「コブラ人間(Reptilio the Human Cobra)」を関与させるためではあるが、話の前振りとして、本当に必要だったかどうかは、若干疑問。メインとなる事件自体が特殊な訳ではなく、その動機が非常に特殊なため、物語の全体像がなかなか見えてこないので、話の取っ掛かりとしては、それだけで完結する前振りの事件は必要だったのかもしれない。事件自体に派手さはなく、話が淡々として進むので、やや物足りない感じがする。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆半(2.5)


事件の様相が、従来の個人対個人の関係から国家対国家(+国家を取り巻くもの)という関係に変わってきており、最早、ホームズに限らず、個人の諮問探偵では、完全には対処しきれない情勢である。「最後の挨拶」の際は、英国政府からの正式な依頼を受けての捜査であったが、今回はそうでなく、巻き込まれ型の事件捜査となっており、ホームズとしては、いろいろな意味で不利であり、活躍しずらかった感が強い。


(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)


上記にも述べた通り、戦争の影が欧州全体を覆い包む中、事件の動機が国家(+国家を取り巻くもの)レベルとなっており、個人の諮問探偵での対処が非常に困難な事件が、本作品の中核を成している。その結果、ホームズとしても、充分な活躍ができず、読者としても、今一つ物足りない感が強い。テーマとしては、面白いのかもしれないが、ホームズ物とするには、難しい気がする。話は淡々として手堅いが、残念ながら、躍動感というか、ワクワク感には欠けている。



2021年10月10日日曜日

コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」<小説版>(The Gloria Scott by Conan Doyle ) - その3

「ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その5)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
オーストラリアへ流刑される途中、グロリア・スコット号内で、
ジェイムズ・アーミティジ(後のトレヴァー氏)が、
ジャック・プレンダーガストから自己紹介を受ける場面が描かれている。

英国では、「ストランドマガジン」の1893年4月号に、また、米国では、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年4月15日号に掲載された短編「グロリア・スコット号事件(The Gloria Scott)」(シャーロック・ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、17番目に発表)において、作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)は、(1)事件が発生した年月と(2)ホームズがジョン・H・ワトスンに対して、事件のことを話した年月について、明確には記述していない。


(1)事件が発生した年月

事件自体は、ホームズが大学に在籍していた際に起きているが、識者の間では、1872年から1876年までの諸説が存在している。

英国国教会の牧師、考古学者、民俗学者で、聖書学者でもあったセイバイン・ベアリング=グールド(Sabine Baring-Gould:1834年ー1924年)の孫で、有名なシャーロキアンのウィリアム・ステュアート・ベアリング=グールド(William Stuart Baring-Gould:1913年ー1967年)が1955年に発表した「詳注版 シャーロック・ホームズ全集(The Chronological Holmes)」では、聖典60編(長編4作+短編56作)の事件が発生年月順に並べられている。その中で、ホームズがノーフォーク州(Norfolk)にあるトレヴァー氏(Mr. Trevor)の屋敷に滞在したのは、「1874年7月12日(日)ー同年8月4日(火)」の間で、一旦、ロンドンへと戻ったホームズが、友人のヴィクター・トレヴァー(Victor Trevor)からの電報を受け取って、ノーフォーク州に駆け付けたのは、「1874年9月22日(火)」と言う説を唱えている。日本等で出版されているホームズ関連のハンドブックや読本は、概ね、グールド氏の説に倣っている。


(2)ホームズがワトスンに対して、事件のことを話した年月

コナン・ドイル自身は、原作において、「ある冬の夜(one winter’s night)」と言及しているだけであるが、これについて、ウィリアム・ステュアート・ベアリング=グールドは、「1887年から1888年にかけての冬」という説を唱えている。

また、ホームズがワトスンに事件のことを話すことになった理由に関しても、コナン・ドイル自身は、原作において、全く言及していないが、ウィリアム・ステュアート・ベアリング=グールドは、「ホームズが、最初の妻を亡くして落ち込んでいるワトスンを慰めるため」と推測している。


「ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その6)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
沈没したグロリア・スコット号から脱出した水夫のハドスンを
ジェイムズ・アーミティジ(後のトレヴァー氏)達が救助する場面が描かれている。


(3)事件の原因となったグロリア・スコット号内で囚人の反乱が起きた年月

これについては、トレヴァー氏は息子のヴィクターに宛てた告白文の中で、「クリミア戦争が一番激しかった1855年(It was the year 1855, when the Crimean war was at its height)」と明記されている。


一方で、トレヴァー氏(本当の名前は、ジェイムズ・アーミティジ(James Armitage))が、賭け事での負けが込んで、勤め先の銀行のお金を横領して、逮捕されたのが、「今から30年前(the laws were more harshly administered thirty years ago than now, and on my twenty-third birthday I found myself chained as a felon with thirty-seven other convicts in the ’tween-decks of the bark Gloria Scott, bound for Australia.)」とも言及している。

また、ホームズがノーフォーク州にあるトレヴァー氏の屋敷に滞在していた際に、トレヴァー氏の元を訪れた水夫のハドスン(Hudson)が、トレヴァー氏に対して、「30年ぶり(it’s thirty ear and more since I saw you last.)」とも言っている。


単純に考えると、事件が発生したのは、1855年から30年後の1885年となるが、1881年3月の時点で、ホームズとワトスンは既に知り合って、「緋色の研究(A Study in Scarlt)」事件を解決しているので、整合性が合わないことになる。

そのため、ウィリアム・ステュアート・ベアリング=グールドは、1855年当時、オーストラリアへの流刑が既に廃止されているという指摘等を紹介した上で、「1845年」という説を唱えている。


英国の囚人は、当初、米国大陸へと送られていたが、米国の独立(1776年)に伴い、1788年からオーストラリア大陸へと送られるようになった。

資料によると、オーストラリア大陸への流刑が終了したのが、

・ニューサウスウェールズ(New South Wales):1851年

・タスマニア島(Tasmania):1853年

・西オーストラリア(West Australia):1868年

となっているので、ウィリアム・ステュアート・ベアリング=グールドの説は、必ずしも、完全ではないと言える。


グロリア・スコット号内で起きた囚人の反乱にかかる記述について、英国版と米国版では、以下のような違いがある。

具体的に言うと、グロリア・スコット号内で囚人の反乱を主導したジャック・プレンダーガスト(Jack Prendergast)の相棒であるウィルスン偽牧師(Wilson, the sham chaplain)が、船長室で船長を殺害した場面である。


<英国版>

He lay with his head on the chart of the Atlantic which was pinned upon the table.

(船長は、テーブルにピンで留められた大西洋の地図の上に、頭をうずめて、倒れていた。)


「ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その7)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
グロリア・スコット号内で囚人の反乱が発生し、
ジャック・アーミティジの相棒であるウィルスン偽牧師が、船長室で船長を殺害した場面が描かれている。


<米国版>

He lay with his brains smeared over the chart of the Atlantic which was pinned upon the table.

(船長は、テーブルにピンで留められた大西洋の地図の上に、脳味噌をぶちまけて、倒れていた。)


Daikei (大恵産業) 品番:S187 ステアリングボス エアバッグ無車用 (スチール) スズキ アルト/フロンテ HA,HB H10.10~16.9
「ハーパーズ ウィークリー」の1893年4月15日号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵 -
グロリア・スコット号内で囚人の反乱が発生し、
ジャック・アーミティジの相棒であるウィルスン偽牧師が、
船長室で船長を殺害した場面が描かれている。
挿絵では、船長が床の上に倒れており、
原作の文章とは合致していないと言える。


識者の間では、英国版と米国版のどちらが、作者のコナン・ドイルによるオリジナルなのか、未だに論争中である。


2021年10月8日金曜日

ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」(Sherlock Holmes / Gods of War by James Lovegrove) - その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2014年に出版された
ジェイムズ・ラブグローヴ作
「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」の表紙
(Images : Dreamstime / Getty / funnylittlefish)


昼食を済ませて、コテージに戻ったシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの元を、地元警察のジョージ・タスカー警部(Inspector George Tasker)を伴って、ビーチー岬(Beachy Head → 2017年5月28日付ブログで紹介済)の断崖絶壁の下の海岸で亡くなっていたパトリック・マリンスン(Patrick Mallinson)の父親で、裕福な実業家(採掘業)でもあるクレイグ・マリンスン(Craig Mallinson)が訪れる。


クレイグによると、妻とは既に死別しており、二人の息子が居て、今日死体となって発見されたパトリックは、次男であった。ちなみに、長男のクリーヴ(Clive)は、現在、クレイグの代行として、エジプトに滞在中とのことだった。

パトリックは、一昨日(金曜日)の晩から、既に行方が判らなくなっていたが、クレイグが商用のためロンドンへ出かけており、昨日(土曜日)の朝に戻ってから、初めて大事となった。それまで、屋敷の使用人達は、パトリックが友人の家に一晩泊まったものと思っていた。

クレイグは、「パトリックの様子が、ここ2~3ヶ月おかしく、ケンブリッジ大学での成績も芳しくなかった。」と言う。最後に、彼は、「パトリックは、女性問題で悩んでいた。」とも付け加えた。

クレイグは、タスカー警部の前で、ホームズに対して、「マリンスン家の名声と事業がスキャンダルに塗れる前に、パトリックの死が自殺であったことを、捜査によって証明してほしい。タスカー警部を含めて、地元警察も、捜査に協力させる。」と依頼するのであった。


クレイグ・マリンスンからの依頼を受けたホームズとワトスンは、パトリック・マリンスンが交際していたエリザベス・ヴァンデンバーフ(Elizabeth Vandenbergh)に会うために、彼女が経営する劇場 / レクレーション用衣装等をレンタル / 販売する店を訪ねる。


エリザベスによると、父親のクレイグは、息子のパトリックと自分の交際を快く思っておらず、多額の手切れ金を条件に、パトリックとは別れるよう、強く要請してきたと言う。また、ある時、エリザベスは、パトリックの胸と背中に何かのシンボルが描かれているのを目にして、悪意のある儀式に巻き込まれているのではないかと心配していたと、ホームズ達に話すのであった。


元々、パトリックの死が自殺であったことを証明するように依頼したクレイグ・マリンスンが、裏に何かを隠しているのではないかと疑うホームズは、タスカー警部と交渉した上で、逮捕されていた「コブラ人間(Reptilio the Human Cobra)」こと、カレブ・スミス(Caleb Smith)を特別に一旦釈放させる。ホームズは、スミスに対して、「自分の捜査に協力すれば、裁判の際、便宜を図る。」と約束する。そして、ホームズは、ワトスンとスミスを伴って、夜半、クレイグ・マリンスンの屋敷内に潜入して、彼の複葉機等を調べるようとする。


果たして、何が発見されるのか?パトリック・マリンスンの死は、父親のクレイグが言う通り、自殺なのか?それとも、殺人なのか?また、ホームズの疑い通りだとすると、クレイグは、一体、何を隠そうとしているのだろうか? 


2021年10月3日日曜日

コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」<小説版>(The Gloria Scott by Conan Doyle ) - その2

ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その3)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
ある夜、トレヴァー氏とヴィクター・トレヴァーが食堂に残っていると、
半分酩酊したハドスンが入って来て、「ノーフォークは、もう懲り懲りだ。」と告げるとともに、
ヴィクターに対して、謝罪を要求する場面が描かれている。
画面右の人物がトレヴァー氏、画面中央の人物がハドスンで、
画面左の人物がヴィクター・トレヴァー。


シャーロック・ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、48番目に発表されたサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire → 2021年8月15日 / 8月29日付ブログで紹介済)」において言及されている「グロリア・スコット号事件(The Gloria Scott)」は、17番目に発表された短編で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年4月号に、また、米国でも、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年4月15日号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第2短編集である「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」(1893年)に収録された。


ある冬の夜、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)の下宿で、ジョン・H・ワトスンは、ホームズが引き出しから取り出した謎の手紙を見せられる。手紙の内容が意味不明なため、ワトスンが傾げると、ホームズは、


(1)この手紙を一読したトレヴァー治安判事(the Justice of the Peace Trevor)が、恐怖のあまり、死んでしまったこと

(2)これは、自分が初めて解決した事件であること


を明かすと、事件を回想しながら聞かせる形で、物語が進行する。実際、物語の冒頭部分以外は、ホームズによる一人称で語られていく。


その事件(グロリア・スコット号事件)が起きたのは、ホームズが大学に在籍していた時である。

ホームズによると、彼が大学に在籍していた2年間の間にできた唯一の友人が、ヴィクター・トレヴァー(Victor Trevor)とのこと。ヴィクターが飼っているブルテリア(bull terrier)がホームズの足首に噛み付いたことがきっかけとなり、二人は知り合い、ヴィクターがホームズを見舞ううちに、二人は親友となったと言う。


大学が休みに入ると、ホームズは、ヴィクターから、ノーフォーク州(Norfolk)のドニソープ(Donnithorpe)に所在する彼の父親の屋敷へと招待された。

ヴィクターの父親であるトレヴァー氏は、ドニソープの地主で、治安判事も務めている人物だった。


屋敷において、ホームズ、ヴィクターとトレヴァー氏の三人が夕食をとっている際、ヴィクターが、ホームズの特技である観察や推理について、話題にする。すると、それに興味を覚えたトレヴァー氏は、ホームズに対して、自分のことを推理するよう、促した。

そこで、ホームズが、トレヴァー氏に対して、


(1)最近、身の危険を感じていること

(2)若い頃、ボクシングを随分とやっていたこと

(3)同じく、若い頃、採掘をかなり経験したこと

(4)ニュージーランドや日本へ行ったことがあること


と話して、次々と的中させる。

続けて、肘の関節部分にある薄らいだ刺青を根拠にして、ホームズが、トレヴァー氏に、


(5)以前、イニシャル「J・A」と言う人物と非常に親しかったが、その後、その人物のことをなんとか忘れようとしていること


を指摘してみせると、驚愕したトレヴァー氏は、発作を起こすと、テーブルに顔を突っ伏して、完全に気を失ってしまったのである。


発作から回復して、気がついたトレヴァー氏は、ホームズや彼の息子であるヴィクターに対して、これ以上、過去の話には言及したくない素振りを見せる。

そして、トレヴァー氏は、ホームズの観察力や推理力を絶賛すると、ホームズに対して、「探偵は、君の天職で、一生の仕事にするべきだ。」と勧めるのであった。トレヴァー氏によるこの勧めが、今までは単なる趣味に過ぎなかった諮問探偵業を、ホームズが専門的な職業として志すきっかけとなったのであった。


ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その4)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
トレヴァー氏が脳卒中の発作を起こして亡くなる要因となった
意味不明の手紙を、ヴィクター・トレヴァーから渡されたシャーロック・ホームズが、
立ち所に手紙の意味を解く場面が描かれている。
画面左の人物がホームズで、
画面右の人物がヴィクター・トレヴァー。

ホームズがロンドンへと戻る日の前日、ハドスン(Hudson)と名乗る謎の船乗りが、トレヴァー氏の屋敷を訪ねて来る。非常に横柄な態度をとるハドスンに対して、ホームズは不快感を感じたが、トレヴァー氏は、「彼は、昔からの知り合いだ。」と弁解すると、ハドスンに対して、「食事も、仕事も、望み通りに提供する。」と伝えるのであった。


ロンドンに戻ったホームズは、7週間の間、有機化学の実験を繰り返していた。秋が深まり、大学の休みが終わりに近付いた頃、ホームズは、助けを求めるヴィクターからの電報を受け取った。全てを放り出して、ホームズは、ノーフォーク州へと急いで向かった。

駅まで馬車で迎えに来ていたヴィクターは、ホームズに対して、父親が危篤である旨を告げる。ヴィクターによると、トレヴァー氏は、昨日届いた手紙を読むと、脳卒中の発作を起こして、倒れてしまったとのことだった。


一体、トレヴァー氏に、何があったのだろうか?


2021年10月2日土曜日

ジェイムズ・ラブグローヴ作「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」(Sherlock Holmes / Gods of War by James Lovegrove) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2014年に出版された
ジェイムズ・ラブグローヴ作
「シャーロック・ホームズ / 戦いの神々」の表紙
(Images : Dreamstime / Getty / funnylittlefish)


本作品「戦いの神々(Gods of War)」は、英国イーストサセックス州(East Sussex)ルイス(Lewes)出身の作家であるジェイムズ・マシュー・ヘンリー・ラブグローヴ(James Matthew Henry Lovegrove:1965年ー)によって、2014年に発表された。

1990年から作家活動を始めたジェイムズ・ラブグローヴは、元々、SF小説をメインにしていたが、2013年から、ホームズ作品についても、継続的に発表している。


ロイヤルメール(Royal Mail)から発行されている国定公園(National Park)の切手の一つで、
サウスダウンズ国定公園(South Downs National Park)の海岸沿いに
セブンシスターズが聳えている

1903年、シャーロック・ホームズは、諮問探偵業から引退して、ロンドンを離れ、英国サセックス州(Sussex)イーストボーン(Eastbourne)の近くにあるイーストディーン村(East Dean)に移り住んでいた。


ビーチー岬の先の海上に、赤色と白色でペイントされた灯台が建っている


1913年9月、欧州全体は、戦争の影に覆われつつあった。そんな最中、ジョン・H・ワトスンは、ホームズの引退先を訪ねた。

ホームズは、早速、ワトスンを連れて、海岸へと続く道路に面した宝飾店に寄ると、店主のゲルヴェーズ・バラクロー(Gervaise Barraclough)から、地下の金庫内に保管してあった宝飾品が盗難されたことを知らされる。金庫の開閉を担当していた新人のジェレミー・トレムレット(Jeremy Tremlett)が姿を消していたため、当初、彼が容疑者として疑われるが、ホームズによる捜査の結果、店主の助手であるヒューバート・シール(Hubert Searle)とイーストボーンに巡業で来ていたサーカス団に属する「コブラ人間(Reptilio the Human Cobra)」と呼ばれる男の共犯であることを判明。途中、ホームズの能力を疑いかけていた店主のバラクローから、一転して感謝される。そして、新人のトレムレットは無事に保護され、助手のシールの自宅から、盗まれた宝飾品が回収されたのであった。


ビーチー岬は景勝地 / 観光名所ではあるが、
世界で最も有名な自殺の名所の一つでもある


翌朝の日曜日、ワトスンは、ホームズよりも早く起床した。海岸の近くまで散歩に出かけ、戻って来たワトスンが上空を見上げると、複葉機が海岸線の辺りを旋回しており、何かを探しているようだった。

ホームズとワトスンは、セブンシスターズ(Seven Sisters → 2017年4月9日付ブログで紹介済)と呼ばれる白亜の断崖絶壁の方へ様子を見に出かける。そして、彼らは、ビーチー岬(Beachy Head → 2017年5月28日付ブログで紹介済)の断崖絶壁の下の海岸で、青年の死体を発見した。服を着ていることから、水泳中の事故という可能性はなかった。それでは、断崖絶壁の上から、あるいは、船の上から転落したのであろうか?

そこへ、ジョージ・タスカー警部(Inspector George Tasker)率いる地元警察が駆け付ける。死亡していた青年の名前は、パトリック・マリンスン(Patrick Mallinson)と判明する。上空で旋回する複葉機を操縦しているのは、彼の父親で、息子が行方不明となったため、複葉機で息子を捜索していたのであった。そして、断崖絶壁の下の海岸で死体らしきものを発見した彼の父親は、確認のために、地元警察の面々をここに派遣させたのだ。


2021年9月26日日曜日

サム・シチリアーノ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / グリムスウェル家の呪い」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Grimswell Curse by Sam Siciliano) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2013年に出版された
サム・シチリアーノ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / グリムスウェルの呪い」の表紙

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆☆(5.0)

ダートムーア(Dartmoor)、そこに建つグリムスウェルホール(Grimswell Hall)、グリムスウェル家に伝わる呪い(The Grimswell Curse)、ローズ・グリムスウェル(Rose Grimswell)に迫る姿なき悪意、そして、ダートムーアに点在する岩場の上に現れる謎の人物と巨大な猟犬等、本作者のサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)が、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Artuhr Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1901年ー1902年) に真っ向から挑戦したとも言えるのが本作で、事件や背景の設定としては申し分ない。


(2)物語の展開について ☆(1.0)

物語が始まり、60ページを過ぎた辺りから、事件の舞台はロンドンからダートムーアへと移る。物語の出だしとして、若干もどかしいところはあったものの、舞台がダートムーアへと移ってからの期待が、正直、かなり高かった。ところが、そこから約300ページに渡り、グリムスウェル家に伝わる呪いに苦しめられるローズと彼女の心の闇をなんとか晴らそうと元気付けるシャーロック・ホームズ、ヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier:ホームズの従兄弟で、彼の相棒を務める)とミッシェル・ドゥデ・ヴェルニール医師(Dr. Michelle Doudet Vernier:ヘンリーの妻)の努力という部分が、あまりにも話の本筋となり過ぎて、事件を推理して解決するという肝心要なところが、脇に追いやられてしまった感が非常に強い。


(3)ホームズ / ヘンリー / ミッシェルの活躍について ☆(1.0)

物語のほぼ4/5にわたって、グリムスウェル家に伝わる呪いに苦しむローズと彼女をなんとか元気付けようとするホームズ、ヘンリーとミッシェルの話が延々と繰り返されるだけで、事件の背後に潜む真犯人を推理しようとする試みがほとんど見られず、手をこまねいているという印象が強過ぎる。


(4)総合評価 ☆(1.0)

前々作のオペラ座の天使(The Angel of the Opera → 2015年1月24日付ブログで紹介済)」(1994年)の場合、オペラ座の怪人エリック(Erik)に焦点をあてて、人間ドラマを前面に出すことで、物語として成功したと言えるが、前作の「陰謀の糸を紡ぐ者(The Web Weaver → 2016年11月13日付ブログで紹介済)」(2012年)に登場するヴァイオレット・ホイールライト(Violet Wheelwright)が、そして、本作のローズ・グリムスウェルが謎の悪意に苦しめられる部分があまりにも延々と続き、ホームズ達が手をこまねいていて、逆に役に全く立っていないという悪い印象しか、読者に与えない。

本作者のサム・シチリアーノとしては、ジョン・H・ワトスンが描くホームズとは異なる本当のホームズ像を強調したいのかもしれないが、ホームズによる推理の冴えが全く見られない。

折角、「バスカヴィル家の犬」に真っ向から挑戦しているにもかかわらず、非常に残念である。